近年、会社を辞めたい労働者に代わって退職の意思を会社へ伝える「退職代行サービス」が広く利用されるようになりました。しかし、令和8年2月には、民間企業が行っていた退職代行サービスについて、非弁行為(弁護士法違反)の疑いで代表者が逮捕される事件が発生し、大きな注目を集めました。
そのような中、最近では「退職」ではなく、まずは「休職」を選択するための「休職代行」が注目されています。
精神的・身体的に限界を感じているものの、「本当に退職してよいのだろうか」「もう少し考える時間が欲しい」と悩む方は少なくありません。そのような場合には、退職を急ぐのではなく、まず休職して心身の回復を図ることが重要です。
休職代行とは、弁護士が労働者の代理人となり、会社に対して休職の申出や必要な手続きを行うサービスです。
単に「休みたい」と伝えるだけではなく、医師の診断書を提出し、就業規則に基づく休職制度の利用、会社との連絡方法、復職時期などについて法的な観点から対応します。
会社には、労働者が安全かつ健康に働けるよう配慮する「安全配慮義務」があります(労働契約法第5条)。
そのため、医師が休養を必要とする診断書を作成しているにもかかわらず、会社が正当な理由なく休職を認めず、出勤を強制した場合には、安全配慮義務違反となり、民法第415条に基づく債務不履行責任を負う可能性があります。
また、長時間労働やパワーハラスメントなどが原因で精神疾患を発症した場合には、会社に対する損害賠償請求や労災申請が問題となるケースもあります。
休職手続は、単に会社へ連絡するだけでは終わりません。
就業規則の確認、休職制度の適用の可否、会社との協議、必要書類の提出、復職条件の確認など、多くの法律的な判断や交渉を伴います。
このような業務は、弁護士法第72条が定める「法律事務」に該当する可能性があります。
実際、退職代行サービスについて非弁行為が問題となったように、弁護士資格を持たない業者が報酬を得て会社との交渉や代理行為を行えば、弁護士法違反となるおそれがあります。
最近では「休職代行」をうたう民間業者も見受けられますが、どこまで会社と交渉しているのかは明らかではありません。比較的低額な料金設定であることから、依頼者の意思を会社へ伝達するだけにとどまっている可能性もあります。
一方、弁護士であれば、会社との交渉はもちろん、休職を拒否された場合の対応や、必要に応じて労働審判・訴訟などの法的手続まで見据えた対応が可能です。
休職には、退職にはない大きなメリットがあります。
最大のメリットは、退職という人生の大きな決断を急ぐ必要がないことです。
例えば、給与や福利厚生には満足しているものの、上司からのパワーハラスメントが原因で出勤できなくなっている場合があります。
そのようなケースでは、十分な療養期間を確保しながら、弁護士が会社に対して職場環境の改善を求めることで、問題が解決し、安心して復職できる可能性があります。
また、健康保険の傷病手当金を受給できる場合や、公務員であれば病気休暇制度によって一定期間給与が支給される場合もあります。収入を確保しながら治療に専念できる点も、休職の大きなメリットです。
もちろん、休職したからといって必ず復職しなければならないわけではありません。
十分に療養した結果、「やはり復職は難しい」と判断した場合には、その時点で退職を選択することもできます。
つまり、休職とは退職を先延ばしにする制度ではなく、心身を回復させ、冷静に今後の人生を考えるための大切な時間を確保する制度なのです。
「会社へ連絡するだけで動悸がする」「朝になると会社へ行けない」「退職したいが、本当に辞めるべきか判断できない」と悩んでいる方は、決して一人で抱え込まないでください。
退職だけが唯一の選択肢ではありません。まずは休職して心身の健康を取り戻し、そのうえで復職するのか、新たな職場へ進むのかを冷静に判断することも大切です。
退職か休職かで迷われている方は、まずは労働問題に詳しい当弁護士事務所へご相談ください。弁護士が代理人となることで、会社とのやり取りによる精神的負担を軽減するとともに、依頼者の権利を守りながら最適な解決方法をご提案いたします。