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ゴールデンウィークや年末年始には、多くの人が新幹線や特急列車を利用します。
しかし、その一方で、地震や悪天候、車両故障、人身事故などによる運休や大幅遅延も発生します。では、列車の遅延によって予定していた飛行機や商談に間に合わず、宿泊費やキャンセル料などの損害が生じた場合、鉄道会社に対して損害賠償を請求することはできるのでしょうか。
旅客が鉄道を利用する場合、鉄道会社との間には「旅客運送契約」が成立します。鉄道会社は旅客を目的地まで安全に運送する義務を負っており(商法589条)、これを果たせなかった場合には、原則として債務不履行責任を負うことになります(民法415条、商法590条)。
もっとも、現実には、鉄道会社に対する損害賠償請求が認められるケースは多くありません。その理由は、多くの鉄道会社が「運送約款」において、運休や遅延に関する責任を大きく制限しているためです。
例えばJR各社の旅客営業規則では、「当社の責に帰すべき事由によるものであるか否かにかかわらず」、旅客が請求できるのは、原則として切符の払い戻しや振替輸送等に限られるとされています。つまり、鉄道会社側に過失があったとしても、商談機会の喪失、宿泊費、イベント参加費、接続便のキャンセル料などの二次的損害については、基本的に補償されないのです。
一見すると、利用者にとって非常に不利な内容にも思えます。しかし、このような責任制限には一定の合理性があります。
鉄道は、不特定多数の利用者を、低廉な運賃で、安全かつ大量に輸送する公共性の高い交通機関です。もし列車遅延のたびに、全利用者に対する広範な損害賠償責任を負うことになれば、鉄道会社の負担は極めて大きくなります。その結果、運賃の大幅値上げやサービス低下を招き、社会全体に悪影響を及ぼすおそれがあります。
そのため、民法上の「私的自治の原則」に基づき、公序良俗に反しない限り、当事者間の合意として約款による責任制限が認められているのです(民法90条)。
もっとも、問題となるのは、鉄道会社に「故意」または「重大な過失(重過失)」がある場合まで、一律に免責が認められるのかという点です。
例えば、重大な故障や事故の危険性を認識しながら必要な点検や修理を長期間怠っていた場合、法令や安全基準に明らかに違反した運行を行っていた場合、あるいは運転士や管理者が重大な安全確認を怠っていた場合などには、鉄道会社の重大な過失が問題となる可能性があります。
この点を考える上で参考になるのが、最高裁平成14年9月11日判決、いわゆる「郵便法違憲判決」です。
旧郵便法では、郵便事故について国の損害賠償責任を大幅に制限しており、故意や過失があっても、一定の場合を除いて責任を負わないとされていました。しかし最高裁は、故意または重大な過失によって損害が生じた場合にまで責任を免除する部分について、憲法17条の保障する国家賠償請求権を不当に制限するものであり、違憲であると判断しました。
判決は、郵便制度の公共性や大量処理の必要性から、一定の責任制限そのものは合理的であると認めています。しかしその一方で、故意や重大な過失による違法行為まで免責する合理性はないと述べています。
この考え方は、鉄道会社の運送約款にも参考になると考えられます。すなわち、通常の遅延について責任制限を認める合理性はあるとしても、鉄道会社に故意または重大な過失がある場合にまで全面的な免責を認めることは、公序良俗違反(民法90条)として無効と判断される余地があります。
もっとも、鉄道事業は厳格な安全管理の下で運営されており、故意や重大な過失による運休・遅延は極めて例外的です。そのため、実際に鉄道会社の損害賠償責任が認められるケースは多くないと考えられます。
それでも、通常の想定を超える重大な安全管理上の問題が存在した場合には、約款による免責が否定され、鉄道会社に損害賠償責任が認められる可能性は十分にあるといえるでしょう。
身近な問題であり、私も経験したことがありますが、列車遅延は非常に困ります。
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