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「黒い雨」訴訟 

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広島地裁で7月29日に、原爆投下後に放射性物質を含んだ「黒い雨」を浴びて健康被害が生じた原告らに広島市などが被爆者健康手帳の交付申請を却下したを処分の取り消し、被爆者と認めて手帳を交付するよう命じる判決を言い渡した。

黒い雨訴訟は、国が援護対象とする「大雨地域」に該当しなかった原告らを被爆者として認めたものです。

国が大雨地域とする範囲は広島市の中心部の爆心地から市北西部にかけて広がる長さ約19キロ、幅約11キロの楕円形の範囲です。これは1945年の広島管区気象台の宇田技師たちによる聞き取り調査に基づく範囲です。

一方で気象庁気象研究所の増田善信・元研究室長が88年、気象台の調査に比べて約4倍の範囲で降ったとの調査結果や、広島市も2010年、約6倍の範囲で降ったとする調査報告書をまとめています。

国側は、黒い雨により原告らに健康被害が生じたとする科学的根拠がないが最も主要な否定理由です。

科学的根拠を厳密に求める場合は、雨の降った範囲、雨に含まれる放射線物質の量、当該地域で受けた雨により受けた総合的な雨(放射線物質の総合量)、放射性物質の総合量により疾患が発生する確率、その余の理由で疾患が発症したことでないことなど、最低限でもこのような点について立証が必要となります。

この点、時の経過から、黒い雨の降った範囲の検証や雨に含まれる放射性物質の量は推定を含まざるを得ず、また、健康被害者も高齢者し、黒い雨以外の理由により健康被害が生じた可能性を否定しきることは難しいと考えられます。

今回の広島地裁の判決は、科学的根拠の立証を厳密に求めることは困難な事例であることから、原告ら善意に対し、救済的な判決を出したものと考えられます。

国はこれに対し、控訴をしています。司法判断に対し、控訴をするのは憲法で定められた権利でありこの点で国を非難する理由はありません。

しかし、被爆者は高齢化が進み、1日千秋の思いで判決確定を待っている気持ちは容易に察することが出来、行政として救済を否定するほどの必要性や合理的理由があるのかは、他の行政制度との関係でバランスがとれているかという視点で考えると、厳密な科学的根拠とはまた異なる考え方が出来るのではないかと思われます。

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