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津波災害|教職員はどこまでの避難義務を負うか?

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東日本大震災の津波で、学校にいた児童らが教職員の指示で避難中に津波に罹災し、多くの児童がなくなった小学校の遺族が市と県に賠償を求めた裁判があり、最高裁が賠償を認める旨の決定が出ました。

教職員には、児童に対しその生命身体に危害が及ばないようにする注意義務があります。この義務に違反があっかかどうかは、具体的には①津波による事故の予見可能性、②津波による事故の結果回避可能性の2つの視点で判断されます。

裁判所は、津波が到来し児童に生命身体の危険が生じることが予想できたかどうかについて、概ね、津波到達の7分前頃に高台避難を呼びかける広報車が校舎前を通った段階で、津波が校舎に到来し、児童の生命身体に危険が生じる旨の予見は可能であったとして、予見可能性を肯定しました。

それでは、回避可能性についてどのまで教職員は責任を負うのでしょうか。

普通に考えると津波が来た場合に避難場所を教職員が知っていれば、そのとおりの指示や行動をとれば済みます。すなわち適切な避難マニュアルの存在とそれに沿った行動をとるべき義務があるかどうかの問題です。

この点については、裁判所は、学校から約700メートル離れた標高約20メートルの高台を避難場所としてマニュアルに記載し、避難経路や避難方法も示していれば、津波によって児童が死亡する結果は回避できたものと詳細に事実認定をし、また、マニュアル不備の改定を怠ったことをも、結果回避義務の違反として認定しました。

また、避難に際し、教職員は学校南側にある裏山への避難を行うべきであったので、逆に不適当な場所(校舎よりも川に近い交差点付近の三角地帯)へ向かうよう避難指示を出した点についても結果回避義務を認めています。

これほどの自然災害で、適切な指示が出来なくても仕方ないという考えも持つ方もおられるでしょうが、昨今、自然災害が多い日本では、自然災害がおきることを前提に避難マニュアル、安全対策マニュアルなどの整備や実践、不備の是正が当然に行われるべき状況となっています。

このような問題は、学校だけでなく、通学などを義務つけられている公共施設や、場合によっては民間の会社に対しても、及ぶ議論です。

自然災害対策マニュアルの整備・実践・是正不備などの問題に取り組むよう具体的行動が急務であり、速やかに対応されることをお勧めします。

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