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婚姻費用とは、夫婦には相互に扶養義務があるため(民法第751条)、夫婦関係が破綻した後でも、相手方の収入が少ない場合に支払う生活費です。
婚姻費用は、①夫婦双方の収入と②子の人数・年齢を基準に計算されます。
それでは、収入のない妻が不倫をした場合、妻から夫への婚姻費用請求に対し夫は婚姻費用の支払いを拒否できるのでしょうか?
この点、婚姻費用は扶養義務から支払うものであり、相手方の不倫などの有責事由と関係なく支払義務を負うのが原則であるため、妻が不倫をしたというだけでは、夫は婚姻費用の支払いを拒否することは出来ません。
しかし、有責事由のある妻(以下「有責配偶者」という。)からの婚姻費用の請求が、「権利の濫用」や「信義則違反」と評価される程度になれば、例外的に婚姻費用の支払いを拒否することが可能です。
その例として典型的なのが、妻が不倫をしてそれを理由に家を飛び出し別居をした場合です。このような事案の場合は、妻からの婚姻費用の請求は、権利濫用や信義則違反として夫は婚姻費用の請求を全額拒否することが認められるケースが多いです。
但し、夫側にも責任(有責事由)がある場合には、婚姻費用の全額の拒否までは認められず、一部のみの拒否に制限がされます。
そのような例としては、妻が不倫後、夫から妻に標準的な程度を超えた叱責がなされ、それを理由に妻が別居をした場合には、夫にも有責事由があるため、婚姻費用の一部のみしか支払いを拒否することは出来ません。
婚姻費用の全部の支払拒否が認められるのは、妻側にしか有責事由が存在しない場合で、夫側に有責事由がある場合は双方の有責事由を比較検討し、婚姻費用の支払いの一部拒否が認められるか、その金額の程度が判断されます。
なお、妻が子を連れて別居をした場合は、子には何らの責任がないため、子の分の婚姻費用を支払う必要はあります。
このように婚姻費用の支払義務は、相手方の有責事由が、権利濫用や信義則違反と評価される場合には全額の支払いを拒むことが可能となります。但し他方の配偶者側にも「有責事由」がある場合には、双方の有責事由を比較考慮し、支払拒否が出来るか・その額が判断されることになります。
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