「症状固定後の治療費」は原則として賠償の対象になりません。 「症状固定」とは、これ以上治療しても症状が改善しない状態です。但し、症状の悪化を防ぐなどの治療費は、「将来の治療費」として認められる余地があります。
交通事故でも健康保険や国民健康保険、労災保険が利用できるので、過失相殺の問題もあるため、これらの保険は利用する方がよいでしょう。
鍼灸による治療、マッサージ費用、温泉療養費、治療器具、薬品代、栄養食品等は、医師から(可能であれば書面で)指示を受けてから行うのがよいでしょう。
弁護士費用特約とは、自動車保険に特約としてついている条項で、交通事故の被害に遭い相手方に損害を請求する場合に、弁護士に依頼した際の、弁護士の相談費用や示談交渉、訴訟費用について、自分の保険会社から支払いを受けられることを内容とする特約です。
一般的な内容では、相談は10万円まで、示談交渉・訴訟費用は300万円まで支払いを受けられます。
休業損害とは、交通事故の傷害が治る(あるいは後遺障害の症状固定)までに発生する収入の減少額を賠償するものです。
事故前3ヶ月の給与明細をもとに算定する方法(計算式:直近3ヶ月間の給与明細総支給額の合計額÷90日×休業日数)が一般的です。 実際の収入状況が立証できない場合は、賃金センサスを用いる場合もあります。
有給休暇の使用分、賞与の減額・不支給、昇給・昇格遅延による損害も損害として認められます。
無職状態となった場合も現実に稼働困難な期間、稼働可能になった場合でも次の就職をするまでや転職に相当な期間のうちの短い期間が、休業損害として認められます。
受傷のため家事を行えなかった期間について、賃金センサスの女性労働者の平均賃金(年収)を収入の基準として、計算します。
例:平成25年産業計・企業規模計・学歴計・女性賃金センサス 353万9300円
後遺障害の逸失利益とは、後遺障害を負ったことが原因で、稼働収入が減少したことにより失われる利益です。 退職金が支給されることが確実な場合は、退職金も損害となります。
(基礎収入)×(労働能力喪失率)×(労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数)が、一般的な計算式です。
労働能力喪失率は、原則として後遺障害別等級表記載の労働能力喪失率に従って決められており、下記に記載のとおりです。但し、稼働していた職業との関係から、より大きな喪失率が認められる裁判例があります。
1級~3級 | 100% |
4級 | 92% |
5級 | 79% |
6級 | 67% |
7級 | 56% |
8級 | 45% |
9級 | 35% |
10級 | 27% |
11級 | 20% |
12級 | 14% |
13級 | 9% |
14級 | 5% |
原則として67歳までの期間とされています。 ただし14級や12級の軽度の神経障害では、14級で5年以下、12級では5年ないし10年となどと喪失期間が短期に制限されています。
ライプニッツ係数とは、将来の収入を事前に受け取る際に年5%の利息を複利で控除する調整数値です。
(基礎収入)×(労働能力喪失率)×(労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数)が、一般的な計算式です。給与所得者の場合、基礎収入は、原則として事故前の現実収入(事故前年の源泉徴収票記載の総収入)となります。 若年者(例えば30歳未満)で、将来的には平均賃金程度の収入が得られる可能性があれば、全年齢平均の賃金センサスを用いられます。 公務員、大企業の場合には、将来の昇級が加算検討されることがあります。
(基礎収入)×(労働能力喪失率)×(労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数)が、一般的な計算式です。 基礎収入は、賃金センサスの女子労働者全年齢平均の賃金となります。 なお、パートなどの収入がある場合、実収入と賃金センサスのいずれか高い方を基礎収入と算定します。
労働能力及び労働意欲があり、就労の蓋然性があるときは、基礎収入は、失業前の実収入の状況や賃金センサスの平均賃金などを基礎収入として、認められる場合があります。 計算式は(基礎収入)×(労働能力喪失率)×(労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数)です。 高齢や不労所得などが十分にあるなどの場合は、労働能力や労働意欲の要件に該当せず、逸失利益が否定されます。
(基礎収入)×(労働能力喪失率)×(労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数)が、一般的な計算式です。 基礎収入は、原則として男女ごとの賃金センサスの平均賃金とします。 女子の場合は、若年であれば男子の平均賃金を採用する判例もあります。 また義務教育卒業までの女子については、男女を合わせた全労働者の賃金センサスの平均賃金を基礎収入とします。
交通事故による傷害により、入院し、または通院したことによる慰謝料です。
実務では、入院期間、通院期間に応じた入院・通院の慰謝料の算出表があり(いわゆる赤本、青本)、それを目安に入通院慰謝料が計算されます。
後遺障害が残存した場合に、その本人の精神的苦痛を慰謝するための賠償金です。
自賠責で後遺障害が認定された場合、実務手引を参考などに計算されます。ちなみに下記は2009年の青本と、2015年の赤本による後遺障害慰謝料です。 なお、後遺障害慰謝料は、被害者の介護が必要な上位等級の場合、親族固有の慰謝料または下記目安に加算が加えられる傾向があります。また加害者の不誠実な対応などで慰謝料が加算されることもあります。
(24訂版青本) | |
---|---|
1級 | 2700万円~3100万円 |
2級 | 2300万円~2700万円 |
3級 | 1800万円~2200万円 |
4級 | 1500万円~1800万円 |
5級 | 1300万円~1500万円 |
6級 | 1100万円~1300万円 |
7級 | 900万円~1100万円 |
8級 | 750万円~870万円 |
9級 | 600万円~700万円 |
10級 | 480万円~570万円 |
11級 | 360万円~430万円 |
12級 | 250万円~300万円 |
13級 | 160万円~190万円 |
14級 | 90万円~120万円 |
(2015年赤本) | |
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1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
植物状態や寝たきりなどの重度後遺障害により、将来的に継続的に介護が必要となる場合の介護費用です。
将来の費用なので、損害の計算に際しては、ライプニッツ係数(中間利息の控除=5%の複利運用の利益の控除)が適用されます。
死亡による慰謝料については、死者の年齢や家族構成などを参考にして作成された下記の目安を実務では参考としています。
(21訂版青本)
一家の支柱の場合 2700万円~3100万円
一家の支柱に準じる場合 2400万円~2700万円
その他の場合 2000万円~2400万円
※一家の支柱とは、主に世帯が被害者の収入で生計をたてていた場合です。
※一家の支柱に準じる場合とは、家事の中心をなす主婦、養育中の母親、親族を扶養している独身者などです。
(2009年赤本)
一家の支柱の場合 2800万円
一家の支柱に準じる場合 2400万円
その他の場合 2000万円~2200万円
近親者の慰謝料については、被害者の父母、配偶者、子以外(民法第711条)以外にも兄弟姉妹に認める裁判例があります。
修理費相当額が認められますが、修理費相当額が事故当時の時価相当額を超える場合は時価相当額が上限となります。
被害車両の修理ないし買換に相当な期間の間、レンタカー費用が損害として認められます。
交通事故の被害車両が営業用車両(緑ナンバー)の場合には、修理ないし買替に必要な相当期間の間に生じた営業損害の純益が損害として認められます。なお代車や遊休車を利用できる場合には請求できません。
過失相殺とは、事故態様について加害者と被害者の責任割合を定め、被害者の損害賠償額から被害者の過失割合分を控除することです。例えば被害者に3割の過失が認められる場合、加害者に請求できる損害は、被害額の7割となります。
最終的には裁判所が事故態様について被害者と加害者の過失割合を決定しますが、交渉段階では、いわゆる実務で参考とされている緑本・青本・赤本などで引用されている事故態様ごとに定められた被害者と加害者の過失割合の表を参考にしながら、個別修正要素を考慮して交渉されます。
素因減額とは、被害者の受傷や後遺障害について、被害者の「心因的要因」または「既往の疾患、身体的特徴、加齢などの体質的・身体的要因」が加わっている場合に、受傷や後遺障害に基づく損害額から一定割合を控除することです。
損益相殺とは、事故によって何らかの金銭的利益を取得した場合、事故による損害額からその金銭的利益を差し引いた分のみを加害者に請求できるということです。
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