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1000円着服で懲戒免職に退職金1,200万円不支給、最高裁は「適法」と判断

労働問題

報道によると、京都市営バスの運転手が2022年に運賃として1150円(乗客5人分)を受け取った後、そのうち千円札1枚をカバンに入れ着服し、それを理由に懲戒免職で、1200万円の退職金が全額不支給となった事案があります。

職員側は、退職金全額不支給は不服として市を相手方として裁判を提訴しました。

一審の京都地方裁判所は、2023年7月、「市の判断は不合理とは言えない」として、不支給処分を適法と判断しました。

これに対し、二審の大阪高等裁判所では、退職手当に関し、「給与の後払い的な性格や生活保障的な側面も軽視できない」としたうえで、1200万円の退職金不支給は「行為の程度や内容に比べて酷だ」と判断し、着服金額が少額で、被害弁償がされていることを考慮し、市の処分を取り消す判決を下しました。

そして、最高裁判所は、「着服はバス事業の運営の適正を害するもの」と指摘し、「全額不支給とした処分に裁量権の逸脱はない」との判決をしました。

退職金が給与の後払的性格を有するという点や、窃取した金額が1000円に程度に過ぎないなどの点からすれば、退職金不支給という懲戒処分は、厳しい判断と言わざるを得ないと考えます。

しかし、最高裁は、事業の運営の適正を根拠に約1200万円の退職金不支給を裁量の範囲内と判断しました。

同判断からは、窃取の金額の大小ではなく、業務の信頼性を損ねたか否かを重視したもので、今後の同様事案においても、業務の運営の適正などを揺るがす行為は、重い懲戒処分が許容されるものと推測されます。

今回の最高裁の判例は、従業員の解雇にについて会社側に厳しい制約を課している現行法下で、解雇以外の懲戒処分について会社側に相当程度の裁量の幅を認めたものと考えられます。

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