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障害児の逸失利益は「労働者の平均賃金」大阪高裁

交通事故

聴覚支援学校に通う被害女児(当時11)が重機にはねられ死亡した事故で、遺族が運転手らに対し、損賠賠償請求を求める訴訟が、大阪高等裁判所でありました。

最大の争点となったのは、被害額で最も大きな金額を占める逸失利益(生きていれば、本来、得られたはずの生涯にわたる賃金)です。

遺族側は、全労働者の平均賃金497万円(18年)を主張したのに対し、被告側は全労働者平均の6割にあたる聴覚障害者の平均賃金294万円(同年)を主張していました。

平均賃金は、被害者が失った将来にわたる稼働収入を算定するために、性別、年齢、職業、学歴など様々な要素から算定されますが、11歳の女児の場合は、年齢的にまだ将来の可能性が広範に広がっいるため、特段の事情がない限り、将来の可能性を最も一般的なもの(職業、学歴、年齢、男女などの要素を含めた平均年収)と判断し、全労働者の平均賃金(平均年収)を使うことが一般的です。

本件裁判では、聴覚障害が特段の事情に該当するかの問題となります。

大阪高裁では、この特段の事情を、全労働者の平均賃金を用いることに「損害の公平な分担の理念に照らし、顕著な妨げとなる理由がある場合に限られる」との基準を示し、これを踏まえ、女児の聴覚障害の程度は、補聴器を使用すれば通常の音声は聞き取ることができ、他人と積極的にコミュニケーションしていたとことや、補聴器の性能の将来的な向上の可能性などから、労働能力の制限(平均賃金を採用するのに顕著な妨げ)は認められないと判断しました。

これまでの裁判例では、聴覚障害などの障害がある場合は、稼働能力が制限を受けたことを前提に年収の計算を行うのが一般的と考えられているため、今回の大阪高裁の判決は、障害者の今後の逸失利益を増額する際のリーディングケースとなることが期待されます。

大阪高裁は、近年の社会情勢で、聴覚障害者が音声認識アプリやチャットなどのツールを活用し円滑なやりとりを図っている企業が増えている点や障害者を巡る法整備が進んでいる点を重視したもので、多様性を認める社会情勢に沿うものです。

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