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佐世保の食品卸会社の従業員が、自殺により亡くなった事件がありました。
報道などによると、食品卸会社に入社した男性社員は、営業や配送、集金業務の仕事に従事していたが、2017年3月に自殺し、その後、同事案は、労働基準監督署により労災認定がされました。
男性の母親は会社に対し損害賠償を求めて提訴。一審の長崎地方裁判所は「2014年12月頃に精神障害を発症し、前後2ヶ月の時間外労働は平均160時間を超え、自殺時も精神障害は継続していた」と認定した一方、自殺までに期間が開いていることから、自殺との因果関係を否定しました。
これに対し、二審の福岡高等裁判所は、精神障害と自殺との因果関係を認める見解を示していたということです。
二審が精神障害との因果関係を認めたということは、2014年12月頃から2017年3月までの間に神経内科クリニックや精神科への通院が継続していたこと、会社が業務緩和などの対応措置をとらなかったなどの事情があったのではないかと推測されます。
うつ病による自殺の労災認定は、ある程度、厳しい要件をクリアーして初めて認定されるため、労災認定を受けた事案では、うつ病と損害との間に因果関係が認められやすいと言えます。
厚労省のHPによると、次の3つの基準を順に満たしたものが、労災認定されるとされています。
(1)認定基準の対象となる精神障害を初亡していること
認定基準の対象となる精神障害は、国際疾病分類第5章「精神および行動の障害」に分類されるものとされていますが、具体的には統合失調症やうつ病、適応障害など精神疾病が典型例といえます。心身症は対象外とされています。
(2)労災基準の対象となる精神障害の発症前概ね6か月の間に業務による強い心理的負荷が見泊まれること 発病前6ヶ月における強い心理的負荷とは、標準的な一般労働者を基準に強い精神的負荷がかかるような出来事があったかが問われます。
心理的負荷は弱・中・強に分類され、生死に関わるような極度の負傷や他人を死亡させるような事故、また強姦や意思を抑圧して行われたわいせつ行為など「特別な出来事」がある場合は「強」となります。
ちなみに、特別な出来事が無い場合は総合的な評価が行われます。長時間労働がある場合は、発病直前1ヶ月でおおむね160時間以上の場合は特別な出来事と同視され、2ヶ月で120時間以上の場合は「強」と評価されます。
(3)業務以外の心理的負荷や個体側要因により発症したとは認められないこと
発病が業務以外の心理的負荷による場合や、本人の個性によって発病した場合は労災にはならないとされています。たとえば、離婚や親族の死亡・病気、借金など業務とは関係のない要因の場合が該当します。
長時間労働は、昨今厳しい制約が課されていること、労働者保護の要請が強まっていることから、会社としては、長時間労働を法令に従い管理する必要があります。
長時間労働でうつ病にり患した方は、法律の専門家である弁護士に相談をすることをお勧めします。
みずほ綜合法律事務所(札幌弁護士会所属)は、個人や会社に安心と信頼をお届けしてきました。
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