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会社が破産をする時に資産を隠すと、刑事犯罪となるのでしょうか?
実例としては、会社の倒産直前に資産約1800万円を隠した運送会社の代表者がいます
2004年に設立された運送会社ですが、2016年頃には売上が100億円を超えたものの、新型コロナの影響で経営状態が悪化し、2022年7月に事業停止し、その際の負債額は約57億円でした。
その際に、社長と取締役が共謀し、会社の資産約1800万円を、元社長が実質的に経営する別の運送会社に移動し、同財産を隠匿したうえで、破産申立てを行いました。
自分の経営する会社の資産を移動しただけで、刑法上は自己の占有する金員を横領(自分のものとして処分)に該当しないのではないか、窃盗罪は占有を奪う行為のため成立しないのではないかなどの問題があります。
但し、刑法上の犯罪ではなく、破産法で犯罪が成立します。
破産法では、会社が支払不能や債務超過に陥った場合に破産手続開始の申し立てをおこなうことができます(16条1項)。
破産法では、会社の資産や負債の状況を裁判所に正しく報告する義務があります。
この点、破産法265条1項によりますと、債務者が破産手続開始の前後を問わず、債権者を害する目的で(1)財産隠匿または破壊、(2)財産の譲渡または債務の負担を仮装、(3)財産の状況を変更して価値を減損、(4)財産を債務者の不利益に処分または債務の負担が禁止されております。
上記に違反した場合は、詐欺破産罪として10年以下の懲役、1000万円以下の罰金またはこれらの併科となっております。
債務者に破産手続開始決定がなされたことを知りながら、債権者を害する目的で破産管財人の承諾その他の正当な理由無く債務者の財産を取得した場合も同様とされております(同2項)。なお法人についても両罰規定として同様の罰金が科されます(277条)。
結果として、詐欺破産罪により刑事罰を
上でも触れたように破産法265条1項では、「破産手続開始の前後を問わず」と規定しております。破産手続開始決定を受けた後だけでなく、その前も規制の対象としております。具体的にどれくらい前まで対象としているかについては条文上示されてはおりませんが、すでに返済が困難な状況となっている場合は該当する可能性が高いと言えます。さらに詐欺破産罪では「債権者を害する意図」が要件となっております。その行為によって債権者が不利益を受けることを認識し、その上で財産の隠匿や破損、第三者に廉価で売却したり、不利な条件でさらに債務を負う、債務を新たに負ったように仮装するといった行為をすると詐欺破産罪が成立することとなります。またこれらの行為に加担した者も同様となります。
本件では2022年7月末に事業を停止し負債は約57億円に上り、8月に破産手続開始申し立てをしたとされます。。その直前の同年5月~7月にかけて、同社元社長と取締役が共謀し、元社長が実質的に経営する別会社に架空取引で約1800万円を移したとのことです。すでに返済困難が明らかとなっている状況で、債権者への配当に当てられるべき資産を現金で別会社に移していたことから、詐欺破産罪の要件を満たす可能性は高いと言えます。以上のように破産法では破産に近い状況での財産隠しには厳格な罰則が置かれております。破産会社だけでなく、第三者もその状況を知った上で財産を譲り受けるなどした場合も同様となっております。債務超過に陥った場合は詐欺破産が疑われることがないよう専門家と慎重に手続きを進めることが重要と言えるでしょう。
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