トップページ > ブログ > 裁判を受ける権利を侵害|強制送還違憲判決

ブログ

裁判を受ける権利を侵害|強制送還違憲判決

その他

難民認定を求める外国人が増えており、難民認定を受けられず、不当な扱いを受けていることが社会的に問題となっています。

難民認定を求めた外国人が難民不認定処分を受けた後に、訴訟を起こす時間を入管から与えられず強制送還させられた件で、外国人らが憲法第32条の裁判を受ける権利を侵害されたとして国に憲法違反による国家賠償訴訟を提訴した事案で、東京高裁はこれを認め60万円の支払いを命じる判決を出しました。

強制送還をされる外国人が裁判を起こす期間を与えられないまま、強制送還されることで違憲と判断されたのは初めてのため、この判決は、今後、国や入管の対応に大きな影響を与えることになります。

違憲判決が出るのは極めて画期的ですが、裁判所の事実認定は丁寧に行われ、また、その評価も国に偏ることなく、行政の対応との格差が明白に浮かび上がります。

裁判所の判決では、次のような事実認定を行いました。

〇外国人2人は1999年と2005年、それぞれ日本に入国し、在留期間を超えて滞在したとして難民不認定処分を受けて入管施設に収容された。その後、一時 的に身柄拘束を解く仮放免許可で出所をした。

〇2014年12月に許可更新のために東京入国管理局を訪れたところ、不許可を通知されて施設に再収容された。

〇これに対し外国人2名は、異議申し立てしたが棄却され、再収容日の翌日に羽田空港から強制送還された。

〇2人は処分取り消しを求める訴訟を起こす意思があったが、棄却決定の告知が送還直前だったため、裁判を提訴する時間的余裕はなかった。

裁判所はこれらの事実を認定した後に、棄却決定の告知を強制送還直前とした入管の対応は強制送還を円滑に実施するためで、「意図的に遅らせた」と評価し、棄却決定の告知後に第三者との連絡も事実上認めずに強制送還したことは「司法審査を受ける機会を実質的に奪い、憲法に違反する」と評価しました。

国としては、送還の手続きを適切に行ったものに過ぎず、裁判の権利を一人一人に認めてそのための期間を与えるとなると送還手続きの遅延が生じることは理解できます。

また、この外国人2名が裁判をしたとして勝訴する可能性は低く、国が裁判で外国人らの主張を権利の乱用と主張するのも理解できます。

しかし、国が社会や企業、国民などに適正手続き、コンプライアンス、自助など様々な負担を求めるのに対し、国自身が憲法上の権利を安易に奪うことは許容されるべきではないでしょう。

日常化する権利行使の機会を事実上、失わせる手法を黙認し続けた場合、結果的に様々な形で一人一人の持つ様々な権利が奪われる結果に繋がります。

司法は時に煩雑な手続きを強いることがありますが、行政の短期間に物事を処理する手法と対比すると、役割の違いや司法と行政の対立構造などの視点からは意義が高いものだと感じます。

「安心」と「信頼」をお客様へ。

みずほ綜合法律事務所(札幌弁護士会所属)は、個人や会社に安心と信頼をお届けしてきました。

20年以上の実績を持つ弁護士が、実績と知識に基づく確かな解決をご提案させて頂きます。

ページの先頭へ